さらばFlash -自作フラッシュゲーム供養-
2012-2015 年くらいまでゲームを公開し、その後 5 年ほど放置していた Flash ゲームサイト「イエモンピクセル」を畳みました。Flash サポート終了に伴い、ブラウザ上で Flash コンテンツが動かなくなるためです。
非常に細々と運営していたサイトでしたが、公開していたゲームのうち「スタチューディフェンス」「黒と魍魎」はかなり多くの人に遊んでもらっており、代表的なコンテンツになっていました。
サイトを閉鎖した後もこれらのゲームがインターネット上に存在していたという記録を残しておきたかったので、供養記事として上記の 2 つのゲームの開発時の思い出を書き残します。
なお、Flash を html5 に変換するツールをいくつか試みたのですが、どれもうまくいきませんでした… もし今後新しい変換ツールが出て、変換に成功したらまたどこかに上げ直すかもしれません。
黒と魍魎
2015 年 3 月公開
プレイ動画: 黒と魍魎 ボスラッシュ
ゲーム内容
いわゆる「メトロイドヴァニア」と呼ばれるジャンルのゲームです。中学生の時ゲームボーイアドバンスの「メトロイド フュージョン」やキャッスルヴァニアシリーズにハマっていて、このジャンルのゲームを自分で作ってみたいと常々思っていました。それが何とか形になったのがこのゲームです。
タイトルの「黒と魍魎」の黒は忍者を、魍魎は妖怪を表しており、要は忍者で妖怪をしばく、といった内容になっています。この世界観は忍びの森という忍者が妖怪と五番勝負をするという小説に大きく影響を受けており、一応のストーリーのようなものも考えていたのですが、あまりに工数が膨らんでしまったためストーリー要素は削除しました。
ゲームは広大なフィールドが舞台になっています。プレイヤーは自由にフィールドを探索することができ、武器やアイテムを見つけたり、ボスを倒すことでキャラクターの性能を強化していきます。フィールドの最深部にいるラスボスを倒すとクリアです。
最初は通常ジャンプしかできないキャラクターが、最終的には下のような多彩なアクションを使えるようになります。
また、敵が落とすお金を集めることで、ショップで武器の性能などを強化することができます。
開発
Flash オーサリングツールの Adobe Flash を使わず、 ActionScript3 でガリガリ開発しました。 flixel というゲームライブラリを使っています。開発にあたっては、rsakane さんという方が運営していた「ActionScript 入門 Wiki」というサイトに非常にお世話になりました。
広大なステージを実際の画面を見ずに構築するのは無理があるので、DAMEというレベルエディタを使って 1 フロアずつマップを作っていきました。このツールで csv を作り、その csv をコードから読み込ませます。
かなりの規模のゲームなのでコード面でも相当な作業量でしたが、やはり一番苦労したのはグラフィックです。フィールドを構成するマップチップや多数の敵キャラに至るまで全て自作したので、膨大な時間がかかりました。開発開始~公開まで 1 年ほどかかりましたが、その間の作業の 8 割はグラフィック作成だったと思います。
特にラスボスのグラフィックは丸 1 週間ほどかかりました。
グラフィックに関しては制作途中で作業量の限界を感じ、元々 11 体ボスを作る予定だったのを 5 体まで減らしたり、最背面の背景についても自動作成のグラデーションのみにしたりと、色々と妥協せざるを得ませんでした。
実装面で最も苦労したのは、敵キャラクターの AI です。1フレーム毎に実行されるメソッドに愚直に動作を書くと簡単に if 文の塊になってしまうので、色々と試行錯誤した結果ステートマシンもどきを使って敵の動きを管理する形になりました。
サウンドに関しては、全てゲーム素材サイトのフリー素材を使いました。音がついていない状態でゲームを作りきり、一番最後に音を付けていきました。世界観にあった BGM が見つからないのではと心配していましたが、非常にクオリティの高いサウンドを集めることができました。特にボス戦の曲はぴったりの曲が見つかり、BGM 製作者の方には感謝しかありません。
ゲームバランス
ゲームの難易度調整に関しては、完全に失敗しました。あまりゲームが上手くない製作者が普通くらいに感じる難易度であればちょうどいいくらいの難易度になるだろう、といった考えで調整したのですが、超絶難度のゲームになってしまいました。製作者は敵の実装を完全に熟知しているので、テストプレイの感触は全く当てになりません。これについては、新しくボスやステージを作るたびに、知り合いに初見でテストプレイをしてもらうプロセスを開発に組み込むべきでした。
また、武器のバリエーションや移動能力など、プレイヤーの自由度が跳ね上がるポイントがゲーム後半に偏ってしまっているのもよくなかったです。ゲーム終盤になるほど作りこみも力が入っていますが、その作りこみを見てもらう前に離脱してしまったプレイヤーが多いです。次に同じようなゲームを作る場合は、序盤中盤終盤にバランス良く選択肢が広がるパワーアップを配置するようにしたいです。
そのほか、
- 敵の攻撃は壁を貫通するが自分の攻撃は貫通しない
- 敵の配置が理不尽
などの意見があり、こういった意見を公開前に拾えていればゲームの完成度は大きく変わっていたと思います。
最後に
このゲームはモゲラというブラウザゲーム投稿サイトに投稿後、フラシュというゲーム紹介サイトに取り上げて頂き、そこが契機となって多くの方に遊んでいただきました。前述の通りゲームバランスが良くなかったので最後までプレイしてくれた方は一握りだと思いますが、その中にはサイトに載せていたメールアドレスに長文の感想を送ってくれた方もおり、人生で受け突ったメールの中で一番嬉しかったメールと言っても過言ではありません。
また、1 年という開発期間は長く、作っている途中で後に控える作業の膨大さに心を折られ、いわゆるエターナる状態になる危機は何度もありました。それでも何とか長年作りたいと思っていたゲームを最後まで作りきることができたというのは、非常に大きな経験になったと思います。
スタチューディフェンス
2013 年 8 月公開
ゲーム内容
「タワーディフェンス」というジャンルに分類されるゲームです。Flash ゲームにおいてタワーディフェンスは大変人気があり、日本製ではDropTowerDefenseやMARS TD PLUS(どちらもすでに公開停止…)が人気でした。
このゲームが一般的なタワーディフェンスと異なるのは、「敵から拠点を守り切る」のではなく「最後に登場するボスを倒す」のが目的だと言う事です。敵を倒しきれない場合に、拠点がダメージを受けるのではなく、ボスが強化されていきます。ボスが強くならないようにタマシイを倒すパートと、最後に復活したボスを倒すパートからなっています。
ボスに到達する前にタマシイを倒し、ボスの強化を防ぐパート。
ボスを倒すパート。
編成画面からフィールドに配置するユニットとボーナス効果を与えるアイテム 3 つを選択でき、選んだ組み合わせによって大きくプレイ感が変わります。
開発
4 ヶ月くらいかかりました。これもflixel を使っています。
一度ベースのシステムができてしまうと、あとは色々なパラメータを弄ってバランス調整をひたすら行いました。この作業はなかなか面白く、結果悪くないゲームバランスにできたと思います。
グラフィックはなるべく工数がかからないように、ユニットに関しては1枚の絵で作ったり、ボス以外の敵は常に浮遊している魂という設定にして、大人しいアニメーションにしました。フィールドに配置したユニットは攻撃方向を向かせるようにしていましたが、小さいドット絵を回転させた時の見栄えがあまりよくなく、流石に妥協しすぎたと思います。
その他色々と作り込みきれなかった部分があったりしましたが、初めてしっかりとしたゲームを作りきることに成功した思い出深い作品です。
Flash フォーエバー
私にとって Flash は、様々な思い出深いコンテンツが存在していたというだけにとどまらず、初めてコンテンツを作るという体験をさせてくれた唯一無二のツールでした。
今までありがとう。